2016年11月14日 TOKYO MX「モーニングCROSS 田中康夫 脱・レッテル貼り 共和党をもメルトダウンさせるトロツキストなトランプ次期大統領」

[堀]田中さんお願いします。「脱・レッテル貼り 共和党をもメルトダウンさせるトロツキストなトランプ次期大統領」。

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[宮瀬]新しくアメリカ大統領に就任するトランプ氏がどんな政策を進めるのか選挙戦最終盤の10月22日に発表した「100日行動計画」に注目が集まっています。「100日行動計画」では「ワシントンの腐敗と特定利益団体との結託を一掃」「米国労働者の保護」「治安と法規範の回復」の3つを柱としています。また、選挙期間中、オバマケアの撤廃を公約に掲げていたトランプ氏は11日、ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、一部制度の維持に向けて再考する可能性を示唆しました。

[堀]トランプ氏が発言を修正をしたとしても、「あぁ、これ言って良いんだ」っていう空気が大手を振るうような事は嫌だなと思ってるんですけど。一方で「脱・レッテル貼り」と。

[田中]私はトランプ氏になった方が良かったと思ってる人間なので。というのはこの間(かん)ね、まさに株価や為替が乱高下をすると。で、彼がちょっと金融寄りの発言をすると上がるってのはプロフェッショナルを自認するトレーダー達っていうのも、殆ど取り付け騒ぎをする一般の市民と同じ愉快犯ですか?って事。

[堀]確かに。

[田中]彼が当選をした日は奇しくも27年前に「ベルリンの壁」が崩壊をした日です。なのに27年経って後退したと言っている人達がいるけど、私はそうではないと思っているんです。

[田中]つまり、彼は実は、バラク・オバマ氏が言ったのは「脱・世界の保安官になりましょうよ」と。「アメリカが全て牛耳る訳ではないよ」と。あるいはバーニー・サンダース氏が言った事は「脱・金融資本主義」。つまり「グローバリズムというものではないんじゃないのか」と。そして、実は教皇フランシスコが「弱者救済」という事を(2013年11月26日)に自ら筆を執った使徒的勧告『福音の喜び=エヴァンジェリイ・ガウディウム』で)言ってきた。一見、違うように見えますけれども、トランプ氏が言ってる事を見るとこの3つをですね、単なる理念ではなくて実践しようとしているというところにイデオロギーが潰えた・・・つまり、民主党も後ろに巨大労働組合

[堀]そうなんですよね。

[田中]共和党も後ろに巨大な資本。そして(企業献金が青天井なアメリカで)ヒラリー・クリントン氏に最も献金をしていたのは巨大金融機関、巨大軍需産業、巨大製薬・化学会社なのではないか、というときに、(サンダースはクラウドファンディング的な個人献金ウルトラ無党派層から支持を集め、)彼(トランプ)は実は、なんと、お金持ちだったかもしれないけれど、全て自前で(選挙運動を)行った。そして全ての既得権者、ここに書きましたけども。

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[田中]実は(今回の)敗者というのは「政官財」(の利権分配トライアングル)、日本で言ったら永田町と霞ヶ関と大手町ですよ。この人達は結局は利権分配の三角形だった。そしてそこに御用学者の人と記者クラブに代表される報道機関、これはアメリカも同じです。これは結局は改革をしようと言いながら具体論になると足を引っ張って「現状追認ペンタゴン(五角形)」じゃないのかと。その中で、ここ、トロツキストとは何か?と書きました。

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[田中]これはご存知のように、所謂(ソビエト社会主義共和国連邦の)ウラジーミル・レーニンが「平和などフィクションだ」とか、あるいはヨシフ・スターリンが「一国による社会主義建設をしよう」と言った時に、レフ・トロツキーという人は「社会主義というイデオロギー云々じゃないんだ」と。やっぱり「体制内で脱・イデオロギーで国民が、国民益があってこそ国家益だ」と。私も知事の時に「県民益」と言ったんですよ。「県民益」が県益(=権益)になったら既得権益になってっちゃう。で、これを実は(トランプは)やろうとしてるんじゃないかという事です。

でも多分、こういう事を申し上げると「そんなことないんじゃないの?」と仰ってる人達が出てくると思うんで。これは実は私が、今はもう無くなった(日本の)民主党政権という時にですね、「増税をするぞ。TPPだ」っていう時に与党連絡会議(税と社会保障一体改革をめぐる政府与党の会議)の中でこの詩を読んだんですけど。

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[田中]これ(与謝野晶子の作品)は最後にご説明します。で、何故こんな事を申し上げたかというと、「アメリカも失業率は5%台だから低位安定なんだ」と。で、先ほど与謝野晶子女史のは「駄獣(だじゅう)の群(むれ)」という言葉(大正4年に詠んだ苛烈きわまる議会批判の作品)なんですけどもね、そうするとアメリカも実は一部の既得権者達のノーメンクラトゥーラ(赤いエリート・赤い貴族)、つまり、赤いソヴィエトの官僚国家と一緒になってませんかと。

アメリカの)実質の平均所得は2004年を100とすると、少しだけかもしれないけれど実質平均所得は97に下がってる。多数派の中央値は95。で、下位10%の人達は92になって上位5%の人達だけ101。(超富裕層は)「否、我々101なんて全然だよ」って仰るかもしれない。

[堀]まさに『21世紀の資本』がベスト・セラーになりましたけれど。

[田中]で、その時にどういう事が起きたかと言うと、先ほど申し上げた教皇フランシスコは(2013年11月26日に発布した288節に及ぶ使徒的勧告「福音の喜び=エヴァンジェリイ・ガウディウム」の中で)「多くの人々は貢献すべき仕事を得られず、挑戦すべき機会も与えられず、その状態から抜け出る事さえ叶わぬ中で排除され・疎外され・・・人間もその存在自体、使用後には即廃棄に至る消費財と見なされている。斯くなる”使い捨て”文化を我々は生み出し、しかも急速に蔓延している」と。

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田中康夫 公式ポータルサイト » 「文藝春秋」6月号の超大型企画『安倍総理の「保守」を問う』「日本の針路はどこに向いているのか。我等の漠たる不安に百人の叡知が答える。」に、 「ローマ教皇の容赦なき警告」と題して寄稿しました。◆文藝春秋

[田中]これはねサッチャリズム、あるいはレーガノミクスの後に出てきたビル・クリントン氏も、あるいはトニー・ブレア氏も結果的には新自由主義のお先棒になってしまった訳です。そしてバラク・オバマ氏も「チェンジ」と言って出てきた。彼が行ったオバマ・ケアは立派な事なんだけれども、でも、彼も(こちらのフリップに記した)同じような事を(ヴァチカン市国での会談の際に)言いながら実は理念で終わってたのではないかと。

これに対してね、今言われているのは「低所得の人達、低学歴の人達が」って言うけれど、そうじゃない。今回(トランプに)入れた人達というのは、まさに、日本も昔「一億総中流(社会)」と言った。今「一億総活躍(社会)」と言って働かされているけれども、アメリカの中流の人達の静かな反乱だと思うんですよね。それに対してヒラリー女史はどういう事を言ったか。ヒラリー女史、あえて言いましたけど”男根的”なんですよ。「私はクッキーを家で焼くような女じゃない」って言ったわけ。

[堀]これでアメリカの白人女性達が票を入れなかった・・・。

[田中]じゃあもし、彼女がジェンダーとかイデオロギーを超えた新しいLGBT的発言として「こう見えて私はクッキーだって焼くのよ」と。これは阿(おもね)ってる(発言だ)と皆さんは言うかもしれないけれど、そうでなかったら(即ち自然な気持の吐露だったなら)少し違ったかもしれない。そうすると、一般的な人達、これは学歴とか職業じゃないんですよ。多くの(自分で考え・語り・動く)”地頭(じあたま)がある人達”、「形式知」の知識偏重じゃない人達は「こういう(巨大金融機関・巨大軍需産業・巨大製薬&化学会社の)パペット・ウーマンだったんじゃないの?彼女は」と。

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[田中]それに対してフィナンシャル・タイムスは「トランプ氏は「米国第一(アメリカ・ファースト)」と言ってる」と。でも、(オバマ氏と同じく「脱・世界の保安官」を目指そうという)これはとても大事な事。じゃあ「(地球温暖化対策の新枠組み)パリ協定離脱をするんじゃないのか」と。これは60か国が批准してますから(既に)OKなんですよ。

[堀]OKと言うのは?。

[田中]アメリカが何か言ったとしても、アメリカはシェール・ガス(やラストベルト地帯の雇用創出の為に石炭火力)を使うかもしれないけれど、世界の潮流は変わりません。ある意味ではイラン(核合意)の問題、これも6カ国で決めてるんですから、アメリカだけ離脱と言ってもEUも含めて変わらない。一番大きな問題は尖閣諸島が「日米安保の対象外です」って(アメリカから)言われた時にどうするんですか、「北方領土も(同じく)対象外です」って(日ロ会談前の現時点で既に主張しているロシアだけでなく、アメリカからも)言われたらどうしますかってところはあるんだけれども・・・。

だけど一方で、フィナンシャル・タイムスとかは「彼は米国の退廃と衰退を暗示している」と言ってるわけ。でも、この人達は、つまりフィナンシャル・タイムスやウォール・ストリート・ジャーナルやワシントン・ポストは、あえて民主党じゃなくて共和党支持だったのに(何故か今回は民主党の)「ヒラリーだ、ヒラリーだ!」って言った訳ですよ。でも「退廃と衰退」は「むしろ今まで(選ばれし1%側)の人達が既にもたらしてませんか」っていう事を(アメリカ)国民は思ってるって事だと思うの、私は。

[堀]言わなかっただけで「本当の米国第一主義はこれまでの大統領や政権でしょ、その産業構造でしょ」って、そこを蓋を開けただけにすぎないと。で、大きな転換が図られるのであればそれは期待をする。

[田中]そういう事。実はこの本を持ってきたんだけど説明の時間が無くなっちゃったんで次回にまたしますけれども。

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[田中]で、何を言ったかと言うと、与謝野晶子大正4年、つまり大正デモクラシーがありながら戦争に行ってしまったような時に「此処(ここ)に在る者」、つまり国会の人達、国会議員とか経営者の人達。

「此処(ここ)に在る者は 民衆を代表せずして 私党(しとう)を」、まさに私利私欲を、「樹(た)て 人類の愛を思はずして 動物的利己を計り 公論の代わりに 私語と怒号と罵声とを交換す」と。

「われわれの正義と愛、われわれの血と汗、われわれの自由と幸福は最も臭く醜き 彼ら駄獣(だじゅう)の群れに 寝藁(ねわら)の如く」、藁くずの如く、「踏みにじられる」と。

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田中康夫 公式ポータルサイト » 11/08/14 「朝日新聞」オピニオン面「『駄獣の群』? 政治史の教訓が生々しい」 で田中代表の発言が紹介されました。◆朝日新聞

[田中]私はこれを、民主党が「増税です、TPPです」って時に、亀井静香ちゃんと一緒に与党に加わっ(てい)たんで「お前らこうじゃないか」って(税と社会保障一体改革をめぐる政府与党の会議で与謝野晶子を全文引用して)言ったら「プギャー」って(笑)、当時の大臣達がお怒りになったの。でもそれを、まさに国民は見抜いたかもしれない。でも、じゃあ、今の日本の政治も含めて・・・。

[堀]韓国もそうでしょ今。

[田中]韓国もそうかもしれない。

じゃあ、アメリカにおいて起きてきた事はね、やっぱりこれだけ「政官業学報」の人達が「ヒラリーだ!」って言ったって事は、やっぱり彼らにとって失うものがトランプだと多いかもしれない。トランプも(ホワイトハウスに)息子を入れるとか義理の息子を入れるとかその辺はどうかなって事は起きてくるかもしれないけれど、ある意味では共和党が巨大でありながら、共和党をも溶かしていく。共和党も既得権者達と・・・。

[堀]そういうものになれば良いですね、本当に。

[田中]あるいはティー・パーティのような、只々、ミニマリズムを言う(リバタリアンな)人達とは違うものを出せるかもしれない。そうやって見るべきではないのかなって事が。

[堀]安易なレッテル貼りじゃないよ、それで見ないでねと。

[田中]そういう事でございます。

[堀]ありがとうございました。

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